プロジェクトタイムマネジメント
目次
プロジェクトタイムマネジメント
マネジメントによる日程の管理
プロジェクトタイムマネジメントは、定められたプロジェクトの期間内にプロジェクトを完了させるためのコントロールを行う管理活動である。
作業時間が足りなくなると納期が守れないだけでなく、成果物の品質低下にもつながる。
そのため、プロジェクトタイムマネジメントでは、最初に作業単位であるアクティビティを洗い出してアクティビティリストを作成する。
そして、アクティビティの作業順序を決定し、各アクティビティに必要な作業時間の見積もりを取る。
これらを基にして、プロジェクトに必要な全体の日程計画を、次のように階層化して策定していく。
大日程表(マスタスケジュール)→ 中日程計画表(工程別作業計画)→ 小日程計画表(週業計画)
スケジュールの作成手法
PEART(Program Evaluation and Review Technique)
PEARTは、日程計画を代表するともいえるもので、アクティビティの日数(時間)と、それぞれの関連が一覧でき、全体の日数を知ることが出来る。
また、複数のアクティビティに注目すると、前のアクティビティが終わらないと開始できないアクティビティもある場合があり、同時並行作業が出来るとは限らない。
PEARTでは、作業の順序を矢印で表したアローダイヤグラム(Arrow Diagram)を使い、どの作業が終わってから、次のどの作業に取り掛かるのかを整理する。
矢印線上のA~Gは作業名、その下に付された数字はその作業の所要日数を表す。また、矢印線の前後のマルを結合点と呼ぶ。
作業全体の開始は左端の結合点、終了は右端の結合点になる。
各結合点までの所要日数を結合点の上に書き加えると下図のようになる。(結合点時刻は時間ではなく日数を表す。)
結合点に複数の作業が入ってくる場合には、最も長くかかった経路の日数が、その結合点までの作業日数になる。
ここでは、結合点㋐に関してA→B→D=12日、A→C=8日なので、作業日数は12日となる。
また、結合点㋑に関しては、A→B→E=15日、A→B→D→F=17日、A→C→F=13日なので、作業日数は17日になる。
ここで、最も所要日数がかかる経路を結んだA→B→D→F→G(20日)をクリティカルパスと呼ぶ。
クリティカルパス上にある作業に遅れが生じると、全体の遅れにつながるため、この経路を重点的に管理する必要が生じてくる。
逆に全体の所要日数を短縮したい場合は、クリティカルパス上の作業を短縮することを考慮していく。
- 最早結合点時刻
結合点時刻は、正確には最早結合点時刻と呼ぶ。
最早結合点時刻はその結合点以降の作業を最も早く始められる時刻を表していて、最初の作業から順に日数を加算していく。(下図)
結合点㋐は、基点にAの日数を加算して1、㋑は1+Bの日数2を加算して3というように求めていく。
最後の結合点㋓は2つの作業日数が重なるが、この場合は大きい方を最早結合点時刻とする。
- 最遅結合点時刻
最遅結合点時刻は、最も遅く始めても間に合う時刻を表している。考え方として、後の作業からさかのぼって計算する。
上図において、結合点㋓の最早結合点時刻は8日であるが、最遅結合点時刻は6日(経路:〇→㋐→㋑→㋒→㋓)となる。このときの余裕時間は、次のようになる。
余裕時間 = 最遅結合点時刻 - 最早結合点時刻 より 余裕時間 = 8 - 6 = 2
つまり余裕時間は2日となる。
最も日数がかかる経路では8日かかり、もう一つの経路に2日の余裕があるならば、例えば、結合点㋒における最遅結合点時刻は6日(8-2)となる。
何故かというと、余裕時間が2日あるので結合点㋒からの作業Dは、本来ならば、前の作業Cが終わる4日目以降(=5日目)から開始せずに、2日遅らせて7日目から始めても間に合うということである。
最も所要日数がかかる(クリティカルパス)経路が8日でそれとは違う経路の最早結合点時刻が6日ならば、作業全体を完了する全体日数を考えたとき、そこから2日余裕が生じて、その経路の結合点の中のある1点においては、そこから次の作業を開始する日数が2日遅れても間に合うということである。
ダミー作業
実際には作業は発生しない(作業日数が0日)が、PERT図上で作業の関連性を示すために挿入される作業をダミー作業と呼ぶ。
上図では作業Cがダミー作業を表し、Eの開始前にCが完了されていなければならないことを表す。
作業B(2日)<作業A(3日)→C(0日)なので、結合点㋐の結合点時刻は3日になる。
この図のようにダミー作業もクリティカルパス(A→C→E)の経路となる場合があることに注意する。
クリティカルパスの再計算
クリティカルパス上の作業は、全体日数に影響を与えるが、日数の調整を行ったら再計算が必要になる。
つまり、複数の経路がある場合、日数調整によりクリティカルパスが変わる可能性がある。
再計算をしない場合、クリティカルパス上の作業を短縮することで、全体の日数を短縮することができなかったり、逆にクリティカルパスが変わってしまうこともある。
クリティカルパスの計算アルゴリズム
クリティカルパスは、最も日数のかかる経路のことである。PERT図にすれば一目瞭然であるが、計算する際には、以下のアルゴリズムを用いる。
アルゴリズムを作成する際には、一つひとつ経路を計算しながら求めていく。
具体的には、各結合点ごとに最早結合点時刻と最遅結合点時刻を求め、余裕時間を計算する。
余裕時間 = 最遅結合点時刻 - 最早結合点時刻
さらに、余裕時間が0の結合点を結んだ経路がクリティカルパスとなる。
クリティカルチェーン
クリティカルチェーンは、クリティカルパスの算出に際し、作業の優先順位(作業に必要な資源量および資源の競合による)を加えた経路である。
例えば、作業を行う人員や機材が限られている場合、それらは優先順位に従って利用することになる。そのため、クリティカルチェーンはクリティカルパスより日数が伸びることになる。
PDM(Precedence Diagramming Method:プレジデンスダイヤグラム法)
PDMは、連続する作業の依存関係(開始と終了のタイミング)を4つの方法で表現する方法である。
PERT図において
- FS(フィニッシュ・スタート):前作業が終了したら、後作業が開始できる。
- SS(スタート・スタート):前作業が開始したら、後作業も開始できる。
- SF(スタート・フィニッシュ):前作業が開始したら、後作業が終了できる。
- FF(フィニッシュ・フィニッシュ):前作業が終了したら、後作業も終了できる。
上記の関係に加えて、
- ラグ:後作業開始までの待ち時間
- リード:前作業終了までの余裕時間であり、後作業を先に開始できる
これらの概念を盛り込むことができる。
ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクトの進捗状況を視覚的に把握するための図表である。
プロジェクトにかかる日数の見積もりに加えて、進捗状況を管理することが出来る。
縦軸に作業項目、横軸に日付や時刻などの時間軸をとった図法で、作業項目を開始してから終了するまでの予定時間を線の長さで表現する。
これにより、作業同士の時間的な関連が一覧できるが、さらに計画線の下に、実績(実際に作業した時間)を書き込むことで、計画と対比しながら進捗状況を確認することができる。
トレンドチャート
トレンドとは「傾向」を表し、トレンドチャートは、時系列の中で予定と実績の差異を確認する目的で使用する。
チャートでは、作業進行上の区切りや重要なチェックポイントとなるマイルストーンを設定し、予定どおりに到達できているかどうかを表現する。
図においては、3点のマイルストーンが設定されているが、最初のマイルストーンでは、工期は予定より早まっているが、予算消化は予定より上回っていることを示している。
また、中間マイルストーンでは、工期は予定より遅れているが、予算消化は下回っている。
最後のマイルストーンでは、工期は予定通りであるが、予算消化は下回っていることを示している。
EVM(Earned Value Management)
EVMは、コストに注目して進捗管理を行う手法で、予算に対する出来高を評価することで、プロジェクトの進捗状況を把握する。
EVMでは、次の4つが基本要素になる。
- PV(Planned Value):計画コスト(ベースライン)
- EV(Earned Value):出来高
- AC(Actual Cost):実績コスト
- BAC(Budget at Completion):完了時の総予算。さらに、基本要素より導かれる指標がある。
- CV(Cost Variance):コスト差異。予算に対して実コストが少ない場合はプラス、超過している場合はマイナスになる。
- SV(Schedule Variance):スケジュール差異。進捗度合いを表す指標で、予定より進んでいる場合はプラス、遅れている場合はマイナスになる。
- CPI(Cost Performance Index):コストパフォーマンス指数。コスト効率を表す指標で、1なら計画通りにコスト消化されており、1より小さい場合は予算を超過していることを示す。
- SPI(Schedule Performance Index):スケジュールパフォーマンス指数。進捗度合いを表す指標で、EV/PVで求められる。1の場合はスケジュール通りに進んでおり、1より小さい場合は遅れていることを示す。
- EAC(Estimate at Completion):完了時の見積もり。プロジェクト完了時の予想コストを示す。AC+ETCで求められる。
参考文献・引用元
このサイトのテキストは一部以下の著作・出版物・Webサイト等より引用させて頂きました。
システム開発のためのWBSの作り方(日経BP Next ICT選書) Kindle版 初田 賢司 (著)
改訂7版 PMプロジェクトマネジメント PMBOK®ガイド対応 単行本 – 2022/3/25 中嶋 秀隆 (著)