OSのアクセシビリティ機能・Windowsの場合

OSのアクセシビリティ機能・Windowsの場合

Windowsに標準搭載のアクセシビリティ機能

WindowsはWindows95からアクセシビリティ機能を標準搭載していて、OSのバージョンアップとともにその機能も進歩してきた。しかしながら、福祉や特別支援教育の専門家でもこの機能を知っていて使いこなすことができる人がまだまだ少ないのは残念なことである。
身近に必要とする人がいても専用のソフトウェアや機器は高価なのでなかなか試す機会が無いが、このアクセシビリティ機能を理解して特殊なソフトや機器を導入する前にまずは試してみることが大切である。

アクセシビリティ機能の多くはWindowsXPまでのOSにはコントロールパネルの「ユーザー補助」で、それ以降はコントロールパネルの「コンピュータの簡単操作センター」に集約されている。また、それらの機能の一部はコントロールパネル内の「キーボード」、「マウス」でも設定可能である。ここでは肢体不自由向けに知っておくべきアクセシビリティ機能(Windows10、Windows7)をニーズから紹介していく。

 

肢体不自由向けに知っておくべきアクセシビリティ機能(Windows7,10)

キーボードが使いにくい場合
  • 固定キー
片麻痺があり、両手でキーボードが押さえられない、あるいはヘッドスティックやマウススティックでキーボードを押さえる人は、ShiftキーやControlキーなどの修飾キーを押さえながら他のキーを押すことが困難である。そんなときに一つのキーを押したままにしてロックできる「固定キー」が役に立つ。
固定キー機能をONにすると、修飾キーを押したときに一度だけその押したキーがロックされた状態になる。
例えば、大文字の「A」を入力したいと考えている場合は、通常は「Shift」キーと「A」キーを同時に押す必要があり、そのままタイプすると「a」と入力されてしまう。
そこで、固定キー機能をONにした状態で「Shift」キーを押すと、そのまま「Shift」キーがロックされた状態になるので、その状態で「A」のキーを押すと「a」ではなく「A」と入力される。
 
  • フィルターキー
不随意運動があり、例えば打ちたいキーの隣のキーに誤って触れてしまい誤入力がある。あるいは、緊張が強くキーを強く押さえるとすぐに離すことができずに何度も同じキーを押してしまい、キーリピートになって余分な文字を入力してしまう人がいる場合。「固定キー」機能の中の様々な設定により誤入力を防ぐことができる。
このような場合の「固定キー」機能では、キーに触れてから入力が有効になる時間、最初のキー入力後、次のキー入力が有効になる時間の調節ができる。
キーボードを押せない場合
  • スクリーンキーボード

麻痺などによりキーに手が届かないなど、キーを押せない場合がある。この場合はモニター上に「スクリーンキーボード」を表示してキー入力を行う。入力モードとして大きく次の3つの設定が準備されている。この設定はスクリーンキーボード上の「オプション」キーをクリックして、下図のような画面を開いて設定することが出来る

  • クリックして選択する

可動域は狭いものの、マウス、トラックボール、トラックパッドなどのポインティングデバイスを利用でき、また、クリックボタンを押す力のある人にはこの設定が有効である。スクリーンキーボードの上にポインタを移動させて、選択したいキーの上でクリックするとそのキーが入力される。

  • 自動的に選択する
この機能は「自動入力(ホバリング)」とも呼ばれ、ポインティングデバイスを利用できるものの、クリックボタンを押す力が無い人はこの設定が有効である。また、ヘッドマウスや視線マウスなどのような特殊なポインティングデバイスを用いる場合にもよく利用される。
入力が有効になるまでの時間を設定できるようになっている。例えば、その時間を2秒に設定すると、2秒間オンスクリーンボードの特定のキーの上にポインタを停留させるとそのキーが自動的に選択され入力される。
  • キーで選択する
この機能は「スキャン入力」とも呼ばれる。ポインティングデバイスを全く操作できない重度の四肢麻痺などがある人でも、わずかに残る残存機能で1つのキーやスイッチを押さえることができれば利用できる。通常のキーボードのSpeceやEnterキー、クリックボタンなど(設定可能)を押すとスキャンが始まり、スキャンの時間も設定できる。
例えば、スキャン時間を1秒間に設定し、キーを押すと縦方向にカーソルが1秒ごとにスキャンしはじめる。そこで再びキーを押すと横方向にカーソルが移動するので、これを組み合わせて目的のキーを選択して入力する。
外部スイッチなどでこの機能を活用したい場合には、スイッチインターフェースを介してスイッチを接続する必要がある。
 
 

マウスが使用しにくい場合

  • マウス速度の調整

不随意運動のある人にマウスポインタを正確に動かすことは容易ではない。そんなときはマウスポインタの動く速度を調節すれば解決できる場合がある。移動速度を少し遅めに設定すればマウスを大きく動かしてしまったとしてもわずかにしか移動しないので微調整が可能になる。

  • ダブルクリックの速度

麻痺がある人や緊張が強い人の中には、適切な速度でダブルクリックできない人もいる。この場合には、クリックの間隔が開いてもダブルクリックが有効になるように間隔の時間を設定することができる。

  • クリックロック

マウスのドラッグ操作にはクリックボタンを押したままポインタを移動させなければならないが、人によってはその動作が難しい人もいる。そんなときにはクリックロック機能をオンにしておけば、一度クリックを長押しすることでドラッグしたい動作を保持することができる。そのままマウスを移動させることでドラッグし、必要な場所で再度クリックをするとドラッグ状態を解除することができる。

マウスを使えない場合
  • キーボードナビゲーション
マウスを使えなくてもキーボードだけでWindowsの操作ができるようにOSやアプリケーションの動作にキーボード上の様々なキーが割り当てられている。これをキーボードナビゲーションという。
例えば、「Windowsロゴキー」を押してスタートメニューを開き、「矢印キー」でカーソルを動かしアプリケーションの上にカーソルを移動し、「Enterキー」で確定して立ち上げることができる。
 
  • ショートカットキー
たいていの人は印刷や保存などの動作をマウスで行っているかもしれないが、ショートカットキーを使うことでこの操作をキーボードだけで行う事ができる。「Ctrl + P」で印刷、「Ctrl + N」で新規作成など多くのショートカットキーが設定されている。
マウスよりも操作が早くなるので、障害の有無を問わず便利な機能としてこの機能を利用する人は多い。
 
  • マウスキー

マウスキーを設定すると、テンキーでマウスポインタの8方向の移動、右クリック、左クリック、ダブルクリック、ドラッグの操作が可能になる。不随意運動があるためマウスの調節が難しい人によく使われている。

マウスキーで割り当てられているテンキーの機能

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